コラム
債権回収に関する内容証明
「取引先が売掛金を払ってくれない」、「貸したお金を返してくれない」のように債権回収のトラブルが発生することがあります。
このような債権回収のトラブルを解決する一つの手段として、内容証明があります。
内容証明に記載すべき事項
内容証明を用いて相手方にお金を請求する以上、請求の根拠・内容について明確にする必要があります。
一般的に下記の事項について記載するとよいです。
- 当事者名
- 請求金額
- 請求の根拠
- 弁済期
- 振込先
- 連絡先
振込先、連絡先の記載は忘れがちですが、債務者はどこに支払ってよいのかわからないですし、連絡先がなければ債権者に相談することができません。
これらの事項を記載することによって、債務者の教義や弁済を引き出す効果が期待できます。
個別の契約類型による記載事項
債権回収に関する内容証明には、請求の根拠について簡潔に記載する必要があります。
たとえば商品代金の請求であれば、売買契約の締結の時期、商品の内容や価格、納品の事実や弁済期等について記載する必要があります。
以下、債権回収に関する代表的なケースについて、記載すべき事項を概説します。
1.売買代金を請求する場合
売買代金の請求をする場合には、売買契約の時期および内容を記載する必要があります。
この記載がないと、何の代金かを特定することができず、債務者が対応できないからです。
そのほか、売買契約の締結日、商品名(商品番号)、商品の数量、代金額、支払時期について記載するとよいです。
2.貸金の返還を請求する場合
貸金債権の特定ののためいん、金銭消費貸借契約の時期および内容を記載する必要があります。
具体的には、金銭授受の事実、金銭を貸した日および金額、返済時期を記載します。
また、利息や遅延損害金の取決めがあれば、その利率も記載します。
その上で、一定期間(通常1週間程度)内に弁済することを求め、支払いのない場合には仮差押え・訴訟等の法的措置を講ずることを予告すると、相手方に対するプレッシャーになります。
3.役務に対する報酬を請求する場合
請負契約や委任契約に関する報酬請求の場合も、何の仕事に対する報酬か明らかにする必要があります。
そのため、契約成立日、契約の内容、報酬額、弁済期を記載することが必要です。
また、利息や遅延損害金の約定があれば、それも記載します。
一定期間内での弁済請求、弁済のない場合に法的手段を講じる予告、および振込先を記載するのは、貸金請求や売買代金請求の場合と同様です。
なお、仕事が未完成であっても、一定の場合には、請負人が注文者から受ける利益の割合に応じた報酬を請求できます。
4.連帯保証人に対し請求する場合
連帯保証において、債権者は主債務者に先に請求しても、連帯保証人に先に請求しても問題ありませんし、また双方に対して同時に請求することも可能です。
連帯保証人への請求をする際には、連帯保証契約締結の事実を示す必要があります。
なお、連帯保証契約の締結には、書面または電磁的記録での合意が必要となります。
また、個人が根保証人*となるすべての根保証契約につき、極度額の定めがない場合には無効となります。
そのほか、保証契約締結時や期限の利益の喪失時*等において、保証人に債務者の情報提供を行う義務があります。
*根保証とは、不特定債務を一定の決算期を定めて保証する契約。つまり保証する者にとってかなり責任の重い保証。
*期限の利益の喪失とは、この権利がなくなること、つまり貸主から一括返済を請求されることを指します。
*参照:みらい総合法律事務所 編著 「内容証明作成のテクニック」