コラム
内容証明を利用すべき場合と利用すべきではない場合
内容証明には内容を証明することにより手続きを明確にしたり、トラブル解決に一役買うといったメリットがありますが、それが発揮できる場合とできない場合を書いていきます。
- 通知をするとき
- 催告が必要なとき
- 意思表示が必要なとき
- 訴訟の提起を考えているとき
- 相手方に誠意があるとき
- 今後も良好な関係を続けたいとき
- 当方に非があるとき
- 訴訟を全く想定していないとき
内容証明を利用すべき場合
1.通知をするとき
例えば、債権を譲渡するときには、原則として債務者へ「通知を送る」か「債務者の承諾を得る」が必要です。
この通知は他の人に違ったこと主張させないためには「確定日付のある証書」でなければいけません。
この証書が一般的に「内容証明郵便」となります。
このように、確実に当事者に通知をするときには内容証明を利用すべきです。
2.催告が必要なとき
例えば、大家が借主の家賃滞納を理由に賃貸借契約の解除をしたいと考えます。
そのためには、大家が借主へ「支払いの催告」をし、一定期間後に解除するとなりますが、この「催告」がポイントになります。
これが手紙やメールでは、借主が受け取っていないと主張すると、その証明は難しくなります。
その場合、「内容証明」を使うことにより、確実に「催告」を行ったとなり、解除に進むことができます。
他にも、家賃滞納が時効(5年)に近づいた時も、裁判に訴える前提として催告を内容証明で行うことにより、6か月時効の停止する効果もあります。
このように法的な催告が必要なときは、内容証明が有効になります。
3.意思表示が必要なとき
訪問販売などは一定期間の間、一方的な意思表示で申し込みの撤回や解除ができる「クーリングオフ」という制度があります。
この制度を利用するには、書面により通知を行わなければならないとされています。
その場合も、相手側が書面は一定期間内に来なかったとならないように、内容証明を利用すべきです。
自分の意志を間違いなく伝えるためにも、内容証明は有効となります。
4.訴訟の提起を考えているとき
例えば、家賃滞納に対して内容証明は相手にプレッシャーを与えますが、実際の裁判になった際も内容証明は証拠となりますので、〇〇の期間、大家は同じ主張をしてきたという一貫性や正当性を伝えるのに有利になります。
訴訟を考えているときに、前段階として内容証明を用いることが有効です。
内容証明を利用すべきではない場合
1.相手方に誠意があるとき
相手が誠意を持って対応しているときは内容証明は利用べきではありません。
例えば、100万円の家賃滞納があり、相手方が経済的に困窮しているため、毎月10万円返しますと申し入れをしてきたとします。
この場合に、内容証明を送り、期限内に支払いがないといって訴訟提起をしたとしても、相手方としても無いものは無いとなり、例え勝訴しても回収できない場合があります。
それどころか、相手側が憤慨し、毎月10万円返すことさえも撤回する可能性もありますので慎重に見極める必要があります。
2.今後も良好な関係を続けたいとき
内容証明は、相手方にはトラブルの開始、訴訟の前段階を意識させるため否が応でも緊張した関係になる可能性が高いです。
今後も親しく付き合いたい相手には内容証明を安易に送るべきではないでしょう。
例えば、取引先が売掛金を勘違いで支払っていないことに対し、内容証明を送ることは、相手を怒らせ今後一切取引ができなくなることも考えられます。
また近隣の問題に対しても、まずは訪問するなどして婉曲的に告げる対応して、内容証明はその後の手段と考えるべきです。
3.当方に非があるとき
内容証明は、相手方に対し強い姿勢を示す手段となります。
そのため、当方に非があるときに内容証明を送ると、結果としてさらに事態がこじれる可能性があります。
例えば、ケンカで双方がケガをしたときに、相手に内容証明で治療費や慰謝料の損害賠償請求を行ったとします。
相手方がむしろ当方に非があると考え、憤慨して警察に被害届を提出するとどうなるか。
場合によっては逮捕勾留されたり、起訴されれば刑罰を軽くするために多額の示談金を支払いことも考えられます。
このように “やぶ蛇” にならないように、非がないか慎重に考えるべきです。
4.訴訟を全く想定していないとき
内容証明を使用しても問題が解決がされない場合、訴訟に持ち越される可能性があります。
当方が、あくまでも内容証明が最後の手段で、訴訟は全く考えていないという場合は利用すべきではありません。
相手側が、内容証明に対し弁護士に相談し、弁護士が交渉してきた場合、当方も弁護士を立てて弁護士同士での交渉となります。
もし交渉が行き詰まれば、かなりの確率で訴訟になります。訴訟にはかなりの時間や労力、そして費用がかかります。
現在もつトラブルを訴訟まで発展させたく場合には、内容証明、特に弁護人が代理して作成する内容証明の送付は控えたほうがよいです。