コラム

売買等に関する内容証明

売買契約は、生活上とても身近な取引(法律関係)ですが、対応の種類は非常に多いです。

契約一般に見られる意思表示から、売買契約について特に定められている意思表示を挙げ、内容証明で行うメリットを説明します。

 

 契約の内容に従った請求 

売買契約によって、売主は売買代金の請求権、買主は商品の引渡請求権を取得します。

これらの権利行使は、もちろん口頭で行っても有効です。

しかし、契約を解除するにあたって事前に相手に請求しておく必要の場合もあります。

この場合に、請求した事実が認められずに、その後の解除も無効と判断される場合もあります。

さらに、長い時間が経過したのちの請求に対し、時効で消滅していると相手方から争われる場合があります。

これらの場面で、請求を内容証明で行っておけば、「このような内容の請求をしていた」ということが公的に証明されます。

それにより、その後の契約の解除も有効と認められることになります。

また、あわせて配達証明を付けておけば、簡単にいつ請求したかの証明することができます。

 

 契約を解消する意思表示 

契約を解消する意思表示としては、契約の解除や取消しがあります。

解除は相手がその債務を履行しなかった場合等に認められるものです。

取消しは、契約時に詐欺や強迫があった場合に認められます。

これらの意思表示は、契約がなかった状態に戻すもので、代金の返還や引渡した商品の返還を求めることとなります。

実際に裁判などで争いになる場合は、主張の前提として契約の解除や取消しをしたことを証明しなければなりません。

そのため、「いつ(時期)」「解除する(内容)」について内容証明(配達証明付き)で意思表示を行うことに意味があります。

そのほか「錯誤*」によって契約を取り消す場合にも、自分の内心と実際の意志がどのように異なるかを、内容証明の形で残して置くのがよいです。

*錯誤:契約の要素について、自分が内心で思っていたことと、実際に相手に行った意思表示が異なること。

 

 売買契約特有の権利関係 

民法は、売買契約について特有の法律関係や効果を定めていますが、これらに関する意思表示も内容証明で行ったほうが望ましいです。

 

1.手付による契約解除

売買契約では、買主が売主に手付金を支払っている場合、相手が契約で定められた義務の履行に着手(土地等の引渡しの準備等)するまでは、買主は手付金の放棄により、また売主は受け取った手付金の倍額を買主に支払うことにより、契約を解除することができます。(民法557条1項)

この場合も、契約を解除するので、その解除がいつ行われたのかという事実を残すために、内容証明を送付することが望ましいです。

 

2.契約不適合責任

民法で従来あった「瑕疵担保責任」が廃止され「契約不適合責任」となりました。

契約内容から乖離しているかに着目し、それに対する責任を規定したものです。

その救済手段は、従来あった損害賠償と解除に加え、追完請求や代金減額請求も可能となりました。

以上のような手段を取る場合でも、事後の紛争に備えて証拠を残すという観点から、内容証明で意思を相手に伝えることが望ましいです。

なお、契約不適合責任は、請求期間が不適合を知った時から1年と非常に短いので(改正民法566条)、この意思表示を内容証明で行う意味はより大きいです。

 

*参照:みらい総合法律事務所 編著 「内容証明作成のテクニック」