コラム

借地・借家に関する内容証明

借地借家法は、建物所有目的の地上権および土地賃借権、ならびに建物賃借権に適用されます(借地借家法1条)。

 

 借家関係 

 

1.借家契約の存続期間・更新

 

最長期間 最短期間 期限の定めのない場合
改正民法 50年 制限なし 土地1年、建物3か月
借地(借地借家法) 制限なし 例外:定期借地権 30年 例外:定期借地権 30年
借家(借地借家法) 制限なし 例外:定期借家権 制限なし 1年未満は制限なしとされる 例外:定期借家権 貸主が解除する場合、解約申入れから6か月+正当な自由

 

借家契約には「期間の定めのある契約」と「期間の定めのない契約」の双方が存在します。

  1. 期間の定めのある契約の場合は、契約の「更新」の問題が生じます。
  2. 期間の定めのない契約の場合は、契約の「解除」の問題が生じます。

 

①更新 期間の定めのある場合

期間満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新拒絶の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます。

その存続期間は定めのないものとされます(借地借家法26条1項)。

また、更新拒絶の通知があった場合であっても、期間満了後、借主が建物の使用を継続し貸主が遅滞なく異議を述べなかったtきは、同様に更新したものとみなされます(同2項)。

更新拒絶の通知には、

  • 貸主および借主が建物の使用を必要とする事情
  • 借家に関する従前の経過
  • 建物の利用状況および建物の現況
  • 貸主が建物明渡しの条件として財産上の給付(立退料)を提供するとの申出等

上記を考慮して「正当の自由」がなければなりません。

 

②解約 期間の定めのない場合

各当事者はいつでも解約申入れができ、その申入れから3か月の経過により契約が終了します(民法617条1項2号)。

もっとも、貸主が解約申入れをする場合は、その申入れの日から6か月の経過により終了します(借地借家法27条1項)。

その終了後も、借主が使用を継続し、貸主がこれに遅滞なく異議を述べなかったときは更新したものとみなされます(同2項)。

貸主の解約申入れには「正当の事由」が必要です(同法28条)。

 

2.借家の効力

借主には造作買取請求権があります(借地借家法33条)。

つまり、貸主の同意を得て建物に造作(畳・建具など)を施した場合、借主は契約終了後に貸主に対してその造作を買い取るべきことを請求することができます。

借主が造作買取請求権を行使した場合、貸主の意志とは無関係に造作の売買契約が成立し、貸主は代金支払義務を負います。

この造作買取請求権は任意規定ですので(同法37条)、貸主が造作設置に際して造作買取請求権を行使しないことを条件として同意することができ、この場合、借主は同請求権を行使することができません。

 

 借地権の存続期間 

 

1.使用収益させる義務

 

最長期間 最短期間 期限の定めのない場合
改正民法 50年 制限なし 土地1年、建物3か月
借地(借地借家法) 制限なし 例外:定期借地権 30年 例外:定期借地権 30年
借家(借地借家法) 制限なし 例外:定期借家権 制限なし 1年未満は制限なしとされる 例外:定期借家権 貸主が解除する場合、解約申入れから6か月+正当な自由

 

借地借家法の借地権の存続期間は上記のとおりです。

期間満了前に建物が滅失したときに、地主の承諾を得て、残存期間を超えて存続すべき建物を再築した場合、その承諾日または築造日のいずれか早い日から20年が期間となります(借地借家法7条1項)。

なお、借主が地主に再築の通知をしてから2か月以内に地主が異議を述べなかったときは原則としてその承諾があったものとをみなされます(同2項)。

 

2.借地権の更新

前記のように、借地の場合、必ず期間の定めのある契約になります。

そのため、契約期間満了の際には更新の問題が生じます。

更新の形態には、

  1. 当事者間の合意
  2. 借主の更新請求(借地借家法5条1項)
  3. 期間満了後の借主の土地使用継続(同2項、3項)

②③の場合は建物の存続が条件となり、また、貸主が遅滞なく異議を述べたときは認められません(同1項但書)。

 

そして、貸主側が更新を拒絶するには、

  1. 土地の使用を必要とする事情
  2. 借地に関する従前の経過および土地の利用状況
  3. 借地権設定者(地主)が土地の明渡しの条件として財産上の給付(立退料)をする旨の申出等

上記を考慮して「正当な事由」があることが必要です(同法6条)。

更新後に建物が滅失したとき、または、借主がその後に地主の承諾なく残存期間を超えて存続すべき建物を再築したときは、地主は解約申入れをすることができ、その申入れから3か月の経過によって契約が終了します(同法8条1~3項)。

 

3.借地権の効力

当事者には地代等の増減請求権があります(借地借家法11条)

借主には建物請求権があります(同法13条、14条)。

つまり、まず、

  1. 借地権の存続期間を満了して契約の更新がない場合には、借主は地主に対して建物を時価で買い取るべきことを請求することができます(同法13条1項)。
  2. 借地上の建物を取得した第三者は、地主に借地権譲渡を承諾しないとき建物を時価で買い取るべきことを請求できます(同2項)。

借主が建物買取請求権を行使した場合、地主の意志とは無関係に建物売買契約が成立し、地主は代金支払義務を負います。

借主は代金を受領するまで土地の明渡しを拒絶できますが、明渡時までの地代相当額を支払う必要はあります。

この建物買取請求権は特約で排除することができません(同法16条)。

 

4.借地条件の変更等

①借地条件の変更

既存の借地条件(建物の種類・構造・規模・用途制限)が法令の規制その他の事情変更によって建物所有目的に適合しない場合、借地条件の変更が相当であるにもかかわらず当事者の協議が調わないは、裁判所は当事者の申立てにより、一切の事情を考慮して借地条件を変更することができます(借地借家法17条1項、4項)。

 

②増改築

土地の通常の利用上増改築を認めるのが相当であるにもかかわらず、借地条件に抵触し当事者の協議が調わないとき、裁判所は当事者の申立てにより、一切の事情を考慮して地主の承諾に代わる許可を与えることができます(借地借家法17条2項、4項)。

 

③更新後の建物再築

更新後に残存期間を超えて存続すべき建物を再築することにつきやむを得ない事情がある場合に、地主が承諾しないときは、裁判所は借主の申立てにより諸般の一切の事情を考慮して地主の承諾に代わる許可を与えることができます(借地借家法18条)。

 

④賃借権の譲渡・転貸

借主が借地上の建物を第三者に譲渡する際に、その譲渡が地主に不利益を与えるおそれがないにもかかわらず地主が承諾しない場合、裁判所は借主の申立てにより、地主の承諾に代わる許可を与えることができます(借地借家法19条)。

第三者が競売または公売によって建物を取得した場合も同様です(同法20条)。

 

*参照:みらい総合法律事務所 編著 「内容証明作成のテクニック」